芸大を狙っていた私にとって、3月の試験に向けて全ての調子をピークに持っていくのは容易な事ではありませんでした。2月に入ると、どの科も私大の試験期間に突入しアトリエはにわかにざわめき始めます。活気付くといった方がいいでしょうか。そんな中、多摩美も併願していた私の心の中に「もし落ちたらもう1浪?…」という消極的な気持ちがムクムクと出現してしまいました。それが原因で精神的にも肉体的にもダウン。しばらく休んだのですが、その間にも試験は近づいて来る訳だから気持ちは焦るばかり。でも力を振り絞って私大対策授業に参加すると、私だけでなくアトリエの仲間達も同じ立場で苦しい中頑張っているんだという事を肌で感じられて、何だか急に楽になれたのです。それからは自分を再び受験モードに持っていく事ができて、多摩美と芸大の両校に合格する事ができました。
制作においては、常に意識を高く持って妥協しない事を心掛け、実力の最低ラインを少しでも上げる努力をしていました。また、時間の経過と共に、それまで積み重ねてきた基礎力に自信が持てるようになり、そういった心持で望めたことは試験の合否に大きく影響したと思います。学院は良き競争相手とともに学ぶ事の多い場所でした。講師の人数も多く、色々な角度でアドバイスをして貰えたので、一つ一つの言葉をしっかりと受け止め理解し整理する事で、次の作品へと繋げていくことが出来ました。加えて日本画科や彫刻科との合同デッサンゼミでは、現役芸大生のデモンストレーションや他の科の講師から指導を受けるなど、普段と違う制作環境の中で、デッサンの本質的な部分を見つめなおす良いきっかけとなりました。
挨拶や掃除など当たり前のことを普通に出来るようになった事や、遅刻せずに毎日授業に臨み、家での時間は学科にあてるなど一年を通じて自分のテンションをコントロールできた事です。学科は一年間しっかりと取り組めばなんとかなる難易度ですが、制作と両立させながらは大変だったので、一週間ごとに学習予定表を立て一日30分でも机に向かうようにしていました。また、普段から芸術やデザインに関する本を読み、使えそうな内容はノートにまとめていました。入試では、例年と違った形での出題にとても焦りましたが、トイレに行ったりしてどうにか冷静さを取り戻し、今この試験会場に講師がいたらどんなアドバイスをするだろうかなどと考え、普段どおりの制作をしました。学院は自分にとって合格する為だけの予備校ではなく、美術の世界の先輩である講師との交流によって、プロのデザイナーや作家になるため様々な事柄や、自らの核となる部分を学べた予備校でした。
制作時間外では、皆で楽しくはしゃいだりすることもありましたが、制作が始まれば教室の空気が緊張感があるものに一変し、負けられないという気持ちが自然にわいてくる雰囲気がありました。学院で知り合った友人はライバル同士でしたが思いやることもでき、アトリエからの帰りにはお互いの悩みや不安を相談することもありました。現役生と浪人生では実力の差があるので、作品や制作の様子を見くらべて、その差を確認したり刺激を受けたりすることが大切ですし、自分の作品に自信が持てるよう、毎課題明確な意図をもって制作する事なども心がけていました。学科も重要なので、過去問題などを毎日コツコツやるように努めました。実技も学科もしっかりと目標を定めて進めていくことが合格の秘訣だと思います。