基本的な技術を習得することは、受験生である以上欠くことのできないものです。とはいえ、技術的なことに執着すると視野が狭まり、絵がつまらないものになってしまうと思います。自分自身を表現するわけですから、自分に合う方法を見つけ出し、自分らしさとは何かを日常的に考え続けることは、とても大切なことだと思います。周囲の様々なことに興味を持ち、ときには思いっきり遊んでみたり、自分の創作にメリハリをつける意味でも気持ちを上手にコントロールして下さい。実際の芸大入試でも私は、1日目の構図を2日目で描き直したのですが、そういった精神的なものを支えに自分らしく取り組めたことが結果につながったのではないかと感じています。
受験期をふり返ると?
高校生活や学科との両立は、体力的に決して楽ではなく、徐々に睡眠時間が短くなりましたが、1日1日はとても内容の濃いものでした。そのため、休日は学科のみに集中して意識的に体を休めていました。気持ちの面で落ち込んだときは、講師や友人に相談するなど気分転換をはかり、後に残さないようにしていました。ともあれ最後まであきらめず、信念をもって取り組むことで、乗り越えてゆけたと思います。
学科について。
学科試験の傾向が大体決っているので、それを理解し、対応できるように努めました。私は本格的に単語を覚えだしたのが11月と遅く、大変な思いをしました。確実に身につけるためには、1年を通して無理のない計画をたてて進めてゆく方がよいと思います。
いつも、自分なりの興味や主体性を無理なく原動力に換えることを大事にしていました。また、実技のみならず、学科も(決して出来の良い学生ではありませんでしたが、だからこそ!)小説など面白いと思う本を読むことで自分の側に引き寄せていく工夫をしていました。講師たちからは、自分が良いと思うことを表現しなさい、といつも励まされたり、一人の作家に向けての、真剣でストレートな問いかけをもらったり、個人を尊重しながらも問題点を解決する切っ掛けが、自然と培われるような制作空間だったからだと思います。科を問わず、受験という共通の目的を持った友人との環境にも想像力や刺激を得られ、気持ちを維持し続けることが出来ました。積極的に描こうとしている中での悩みは、良いものができるときの自然現象のようなものと素直に受け止め、絶対に諦めないでください。体調管理も忘れずに。
不調時の打開策をひとつ
自画像を描くことをお勧めします。調子のでないときは、何をやっても辛いものですが、自画像なら自分自身を描くわけだし、自分を見つめ直す機会として、スランプ脱出の良い切っ掛けになりました。受験から少し離れた表現として好きなこともでき、興味深い題材だと思います。
学科についてひとこと
現役時は、模擬試験でも3割以下、相当できの悪い学生でした。描くことのみに夢中で、実際やっていませんでした。落ちた原因の1つだったと感じ、次年度はとにかく出来ることから、詰め込めるだけ詰め込むと決意し、それを自分に課すことにしました。例えば、単語や漢字、構文などです。本気でやれば、なんとかなるものだと実感しています。
入試について
試験は“運”だと思います。単なる運と云って良いか分かりませんが、そのツキを引き寄せ逃さないためには、自信に裏付けられた力をつけることが大事だと思います。毎日の積み重ねがチャンスを掴ませてくれたのではないかと思っています。学科もしかりです。